ある日、川の水鳥を観察していました。サギやらカモやら数種類の水鳥がいて、ちょうど食事の時間の様でした。ほぼ全部の鳥が、水の中に頭を入れて何かをつついて、頭を上げて次を探して、と夕方の食事をしていました。
鳥にもいろんな性格のがいました。しきりに一生懸命えさを探すもの、ゆっくり水面を泳ぎながら時々頭を入れて探すもの、立ってちょこちょこ歩き回りながらちょいちょいエサをつまむもの、みんなと一緒にかたまってえさを探すもの、少し離れてえさ場を独自に開拓するもの。
水の流れが滝のように落ちているところがありました。上手にもたくさん水鳥たちはいましたが、流れの下手、滝つぼの様になっている所にも水鳥たちはいて、そこでもめいめいがのんびりと夕食の時間を楽しんでいました。
えっ! とこの目を疑ったのはその時です。1羽の水鳥が、滝のように落ちる水の流れに立っているのです。立っているだけじゃなく、その流れの中にいるであろう草か虫かを一生懸命つついているのです。どんな鉤爪(かぎづめ)と、どんなバランス感覚を持っているのでしょう! そして、どんな勇気と、どんな開拓精神を持っているのでしょう!
私は打ちのめされました。鳥の世界にも、こんなずば抜けたヤツがいるのだと。しばし驚嘆の目で観察していました。断崖絶壁の、落っこちそうな流れの中で、いつまでも飽かずに、動じず、食事をしている1羽の水鳥。ヤツには参りました。そして、私の方が根負けして、そそくさと帰途についたのでした。
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