◎象嵌装大刀とは?
鹿屋市吾平町上名の中尾地下式横穴墓群で発見された、今から約1500年前の古墳時代の刀です。象嵌とは、異なる材質同士を嵌め込む技法のことで、この刀には、鉄に銀が嵌め込んであります。
刀のツバとハバキに心葉文、ハバキの上部と柄頭の金具に2重半円文が施されていて、象嵌技法が施された出土品としては、県内で初めての発見となりました。また、ツバに心葉文を持つ刀は、全国でも16例目、九州では4例目と大変貴重な出土品です。
しかし、平成8年に出土した際には、サビに覆われていて象嵌技法は発見されていませんでした。その後、平成18年に鹿児島県立埋蔵文化財センターのX線レントゲンにて、象嵌技法が確認されましたが、当時の技術では文様の詳細を確認することはできませんでした。その後、平成22年に九州国立博物館と別府大学渡辺准教授の協力により、X線CTによる撮影を行い、象嵌技法の詳細を確認することができました。
象嵌装大刀を持っていた人については、実はまだ詳しくわかっていません。象嵌装大刀は、鹿屋で作られたものではなく、朝鮮半島からの渡来品か大和地方で製作されたものが中央政権との交流により与えられたものであると考えられています。
◎忠実に再現された象嵌装大刀
材質や大きさだけでなく、製作方法まで忠実に再現したレプリカを製作しました。一見するとハートを思わせる心葉文は、実は中国の空想上の生物「鳳凰」を表現しています。
◎象嵌装大刀と高校生ミュージカル「ヒメとヒコ」
鹿屋市出身の演出家・松永太郎さんの原作・演出による、高校生ミュージカル。出演者は大隅半島の公募によって集まった高校生で、1500年前の大隅の王「ヒコ」と奄美の巫女「ヒメ」の物語。平成20年(2007年)に鹿屋で初演され、奄美や霧島、志布志、沖永良部で公演を行ったこともありますが、現在は年に一度の鹿屋公演のみ。徐々に県内でも認知度が高まっています。
これまで、鹿屋市で出土した「勾玉」や「石棺」などが劇中に登場しており、後には昭和25年に出土した「短甲(たんこう)や衝角付冑(しょうかくつきかぶと)も、劇中で身に着ける甲冑(かっちゅう)や冑(かぶと)のモデルとなっていますが、教育委員会では平成23年度に「象嵌装大刀」を新たに劇中に取り入れ、「象嵌装大刀PRプロジェクト」として文化財と文化芸術を融合させた情報発信を行ってきました。
また、この取り組みを紹介するDVD「象嵌装大刀とヒメとヒコの物語」やリーフレット「象嵌装大刀解体親(深)書」も作成しています。
◎象嵌装大刀PRキャラクター『ラブヒコ』
ラブヒコは、現代の子ども達に鹿屋に残されている史跡や遺物を紹介するために、古墳時代からタイムスリップしてきた男の子。目の形は、鹿屋市吾平町中尾地下式横穴墓群で発掘された「象嵌装大刀」の文様の特徴であるハート形。また、口は“チュー”の形になっていて人を見かけると“ハグ”を求めていきます。人が大好きで誰彼構わずハグをしていき、周りの人達に愛を振りまき、幸せをもたらします。「ラブヒコ」に抱きつかれた人には幸運が訪れる・・・らしい。