昭和49年、世界各国の植物学者たちが高隈山の原生林を調査に訪れた。22カ国54人の外国人学者。バスから降りてきた学者たちは、タブやシイ、カシなどの原生林をみて口々に感嘆の声をあげた。
ウイーン大学学長は「地球上で照葉樹林の原生林はもう絶滅していると思っていたが、ここ高隈山に来てみてすっかり驚いた。これは大変な遺産だ。世界最後の照葉樹林としてぜひとも保護して欲しい」。
また、マルチンルター大学の博士は「しかも、都市の近くにある。このこと自体が実に素晴らしい。私もこれは人類の宝だと思う」と述べた。
高隈山の特徴
高隈山は、鹿屋市と垂水市との境界付近に横たわり大隅半島中央部に位置する、鹿児島県内で屋久島、霧島に次ぐ第3の高山群です。
標高1,237mの大箆柄岳を主峰に、標高1,000mを超える七つの峰が連なっています。
○ 大箆柄岳:1,237m
○ 御岳: 1,182m
○ 小箆柄岳:1,149m
○ 妻岳: 1,147m
○ 二子岳: 1,107m
○ 平岳: 1,105m
○ 横岳: 1,094m
とんがった妻岳や平べったい平岳、山が横に傾いて見える横岳など急峻で変化に冨み、また万滝・白滝・赤松滝といった大きな滝や美しい沢があることが特徴です。
学術的にも貴重な山で、高隈山単独の森林生態系を形成しており、全国で12箇所しかない「森林生物遺伝資源保存林」にも指定されています。
植物では、よく知られた「タカクマホトトギス」といった「タカクマ」の名が付く植物が存在します。
高隈山との関わり
大箆柄岳の「箆」は、「スズタケ」の意味で地元ではスズタケのことを柄(ガラ)とも呼び、一帯がスズタケに覆われていたことに由来しています。古くからの霊山で修験道の本山として山伏たちの修行がなされていました。
江戸時代に入ると、民衆の岳参りが盛んになり、その名残として各峰には今も多くの石祠が残されています。
現在でも各山へお参りする行事が残っているほか、自然体験の場として、沢登り、雪山体験、遠足などで活用するなど多くの人が高隈山と関わりを持っています。
高隈山の整備
戦後まで利用されていた大箆柄岳登山道が整備されました。
この古道の復活により、大箆柄岳ルートに選択肢が広がり、より充実した登山が楽しめるようになりました。
大箆柄岳登山道の魅力について、高隈山のほか大隅半島の自然をガイドする江口智昭さんは「大箆柄岳登山道は、春には新緑やアケボノツツジ、夏には沢伝いに歩く山の冷気、秋には紅葉を見る楽しみがあります。また、季節によって楽しむことができる高山植物も大変豊富です。
健脚コースでもあるので、スポーツクラブにとって体力面・精神面の鍛練にも活用できますし、中央アルプスに登る方の練習にも適しています」と話してくれました。
登山道は、山麓である大隅湖から片道5時間と長い行程になりますが、渓流伝いから開けた古道の展望岩、さらに山頂部一帯では1万年前のヴュルム氷期の植物であるブナ・イチイ等の植物が隔離・遺存された状態の森林を見ることができます。
高隈山の四季
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春:アケボノツツジ
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夏:タカクマヒキオコシ
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秋:ツチアケビ
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冬:樹氷